僕が就職活動をしていた2010年頃、とあるソフトウェアメーカの面接でこんな質問をされました。
「日本に会議室はいくつあると思いますか?」
いや、Googleとかの採用面接でこんな質問されるって聞いてはいたけど、僕が受けてるような下流工程のメーカで出るとは思わないじゃないですか。(当時文系にも関わらず、迷走してSEを受けたりしていた)
そして、苦し紛れに出した僕の回答が下記です。
(やべ、まず日本の人口からよくわからん。待てよ、昔『2億4,000万の瞳』とかいった歌があったな。するってぇと、人間の目は2つだから1/2して日本の人口は1億2,000万人や。そして会議室の数か。そんなん分かるわけないやん人間が2人揃えば1つ会議室が出来上がることにしたろ、半分の6,000万室や。ええい、ままよ!)
俺氏「6,000万室です」
するとすかさずこう質問が来た。
面接官「その根拠は?」
俺氏「」
面接官「根拠はよ」
俺氏「えぇっと、昔、郷ひろみの『2億4,000万の瞳』という歌がありまして、人間の目は2つだから・・・(ペラペラ)」
面接の結果については言うまでもないでしょう。面接官と見つめ合う視線のレーザービームがただひたすら痛かった。そしてその時は、「つまらん問題面接で聞くなや!俺の生き様の方に着目しやがれこのダボハゼが!」と思っていました。のですが、実際に僕が企画営業職として仕事をしていると、出てくる出てくる、一般に知られていない数字を推計する場面が。
というわけで、このような推定を「フェルミ推定」というのですが、フェルミ推定の基礎と、推定に使える一般的な数字を本当にさわりのさわりだけまとめてみました。
このノウハウ用いることで、雲を掴むような数字に少しでも輪郭を持たせ、企画に自分の意志を強く盛り込むことができるはずです。
※今回の記事作成にあたり、下記の書籍を参考にさせて頂きました。フェルミ推定だけでなく、社会人としての基礎的な数字の見方についてまとめてありますので、数字に弱いなーって思ってる人に全力でおすすめします。
フェルミ推定とは
『実際に調査するのが難しいようなとらえどころのない量を、いくつかの手掛かりを元に論理的に推論し、短時間で概算することを指す。例えば「東京都内にあるマンホールの総数はいくらか?」「地球上に蟻は何匹いるか?」など、見当もつかないような量を推定する。』(Wikiより)
とあります。
要は、答えのない数字を導くために論理的にロジックを組み立てていって、おおよその数値を推計する技ですね。これは、論理的思考力を見るために企業の採用試験等で問われることがあるのですが、答えがあってるかではなく、答えを導き出すまでの過程を評価するわけです。
で、僕は学生の頃軽視してたのですが、実際の仕事の現場で似たような場面はいくつもあり、このスキルは実戦で使えるぞと、ようやく思い至りました。
それでは試しに、下記の問題を考えてみましょう。
日本のGDPから日本人の平均年収を推定して下さい
これを今からロジックを積み上げて考えていきます。
【回答例】
日本のGDP(国内総生産)は約500兆円。
GDPとは、付加価値(=売上高−仕入れ)の総額。
付加価値のうち、人件費割合(労働分配率)は約60%。
一方、国内の人口は1.3億人。そのうち働いているのはざっくり半分の6000万人。
したがって、一人当たりの平均年収は、
500兆円×0.6÷6000万人= 500万円(およそ)
といった具合になるわけです。
見ていただいたら分かるとおり、GDPや労働分配率等の基本的な数値は頭に入れていなければならないのですね。逆に、ある程度の数値を知っていれば、たいがいのことは数字の組合せで導き出すことができるようになります。
頭に入れておきたい一般的な数値は本記事の最後にまとめます。
では、それを踏まえて第2問。
日本にポストの数はいくつあるか推定して下さい
【回答例】
東京-博多間は新幹線(時速200キロメートル)で6時間だから1200キロメートル。
北海道から鹿児島まではその倍ぐらいなので約2400キロメートル、それを長方形の縦辺とすると横辺は約200キロメートル。
そこから日本の面積を約48万平方キロメートルと推定する。(本当は38万平方キロメートル)
日本は山地が多いので人が住んでいるのは30%とすると、約15万平方キロメートルが居住地域。
1平方キロメートルに1本のポストとすると15万本。(実際は19万本)
いかがでしょうか。日本の面積を知らなくても生活の中で知り得る新幹線の乗車時間なんかから何とか推定できるわけですね。漠然と考えても、日本のポストの数は100万本なのか10万本なのか1万本なのかよくわかりませんが、論理的に推定するとだいたい10~20万本かな、くらいはわかるようになるわけです。
推定のポイント
では、フェルミ推定を行上でのポイントはどういったところなのか。コツとしては以下に集約されるようです。
1.推定すべき内容に関連しそうな自分の知り得る数値を片っ端から引っ張ってくる
2.ストーリーを作り数値を仮置きしていく
3.置いた数値に破綻がないか改めて検証する
答えを出してしまうと普通に考えてあり得ないよね、というような数値が出ることが往々にしてありますので、パーツとなる数値を検証していくことは非常に重要なプロセスなんですね。
決算資料への適用
フェルミ推定に慣れてくると、企業の財務諸表や決算短針からもあらゆる情報が推定できるようになります。例えばごく簡単な例として、トヨタと日産の決算短針より社員1人当たりの売上高・利益を推定してみましょう。
トヨタ(連結) ※2016年3月期決算短針より
社員数 :344,000人
社員1人あたりの売上は・・・
28兆4,000億円 ÷ 344,000人 ≒ 8,250万円
社員1人あたりの利益は・・・
2兆8,500億円 ÷ 344,000人 ≒ 828万円
さすがトヨタ。1人で828万円の利益とは。さすが日本を代表する企業なだけありますね。
日産(連結) ※2016年3月期決算短針より
社員数 :152,500人
社員1人あたりの売上は・・・
12兆1,900億円 ÷ 152,500人 ≒ 8,000万円
社員1人あたりの利益は・・・
7,930億円 ÷ 152,500人 ≒ 520万円
日産も負けてませんがやはりトヨタよりは落ちますね。ちなみに2年前同じ試算をしたときは1人辺りの利益は410万円でした。2年で利益を100万上げてますね。カルロス・ゴーン様々です。
ちなみに、トヨタ、日産に続きて自分の会社の1人当たりの利益出してみましたが、ファッ!?ってなりました。何回も計算やり直して置いた数値に破綻がないか検証しましたからね。検証の結果数値は変わらず、要するに、涙ちょちょぎれました。巨大企業と比べるもんじゃあないです。
そういえば、「自分とイチローの給料の差を身長に置き換えてみたら、俺3ミリだった」とブラマヨ吉田が言っていた。いや、俺とブラマヨ比べたら俺ナノレベルやがな。
フェルミ推定をする上で押えておくとよい数字
先述しましたが、推定する上で基本となる数字はある程度押えている必要がありますね。特に就職試験を控えている方はもうこの際覚えてしまった方がいいかもしれません。ちなみにいますぐ使わない人でも、これだけ覚えとけば随所で一目置かれる存在になれると思いますよ。
2016年現在(あくまでもざっくり)
・日本の人口 :1億 2,500万人(2050年1億人、2060年9,000万人)
・日本の労働人口 :6,400万人
・日本の完全失業者数 :220万人
・日本のGDP :500兆円
・日本の企業数 :412万社
※内、個人事業主 :240万社
・平均年収 :400万円
・現在の出生率 :1.42人
・年間の出生数 :100万人
・日本の世帯数 :5,500万世帯
・日本の単独世帯数 :1,700万世帯
・日本中の乗用車の数 :6,000万台
・コンビニの1人1回平均買い物額 :580円
・アメリカの人口 :3億2,000万人
・アメリカのGDP :16.5兆ドル
・中国のGDP :9兆ドル
・世界の人口 :73億人(2050年95億人、2100年112億人)
まとめ
いかがでしたでしょうか。この推定を使えるようになると、概算で見積を作成する場合や、将来の見込収益を算出する場合、また、新しいビジネスモデルを考える際に、非常に役立ちます。そして、世の中の基本的な数字を常日頃押えておく、という意識も数字に強くなる上で欠かせないことだと思います。
最近は、どんな答えもネットに転がっていると錯覚しがちですが、重要な推計データはまだまだ人間がその論理的思考力を持って推定しなければならない場面がいくらでもあり、それをできるのがある意味数字に強いということであり、デキリー(できるリーマン)と呼べる存在ではないでしょうか。僕も精進して、ダメリーからの脱却を目指します。
ちなみに、皆さんは日本の会議室の数について、どんなプロセスで推定しますか?
僕にとっては因縁の難問です。。