たまの休日、僕はよく神保町界隈に出没するのですが、日本の書店の王様である三省堂書店に足を運んだところ、こんな本を見つけました。
表紙を見てみると、ビニールカバーで厳重に封されており、著者もタイトルも伏せられていて、代わりに以下の文章が手書き文字で書いてありました。
以下全文です。
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申し訳ありません。僕はこの本を、どう勧めたらいいか分かりませんでした。どうやったら「面白い」「魅力的だ」と思ってもらえるのか、思いつきませんでした。
だからこうして、タイトルを隠して売ることに決めました。
この本を読んで心が動かされない人はいない、と固く信じています。
500Pを超える本です。怯む気持ちは分かります。
小説ではありません。小説以外の本を買う習慣がない方には、ただそれだけでもハードルが高いかもしれません。
それでも僕は、この本をあなたに読んで欲しいのです。
これまで僕は、3,000冊以上の本を読んできました。その中でもこの本は少しでも多くの人に読んで欲しいと、心の底から思える一冊です。
この著者の生き様に、あなたは度肝を抜かれ、そして感動させられることでしょう。こんなことができる人間がいるのかと、心が熱くなることでしょう。僕らが生きるこの社会の不条理さに、あなたは憤るでしょう。知らないでは済まされない現実が、この作品では描かれます。あなたの常識は激しく揺さぶられることでしょう。あなたもこの作品と出会って欲しい。そう切に願っています。
ここまで読んでくれた方。それだけで感謝に値します。本当にありがとうございます。
※もし既にお持ちの本であった場合、返金いたしますのでお申し出ください。
文責:長江(文庫担当)
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ちなみにこの本、810円で三省堂書店の先週の売り上げ1位ということでした。
分かることは、500P超え、小説ではない、既刊である、ということだけ。
僕は全く違う本を買いに来てたんですが、なんやこのマーケティングと思いながらも急激にこの謎本が気になり始めて、気がつけばスマホで検索かけてました。
「さわや書店 入魂の一冊」
「さわや書店 文庫X」
「さわや書店 文庫X 中身」
「文庫X ネタバレ」
と、色々検索ワードを試したのにはワケがあり、なんと一切のネタバレ記事が出てこないのです。出てくるのは7月に発売して以来異例の売れ行きであるというニュースと、「こんなに売れるとは」と驚きを隠せないさわや書店の長江さんの声くらい。
きょうびはtwitterやろ!とtwitterで検索かけましたが、購入報告はあっても中身に関するネタバレは一切なし。
ここまで来ると、まさに読書家によって秘密が守られているようである意味粋だな、と思いましたよ。うーん気になる。。
810円と文庫にしては高いですが、つまらん本に対してこんな企画で810円むしるなんてことはないやろ!と思ったらもうレジに持って行ってました。こんなに中身が気になる本もないので、ある意味開けるまでのエンタメも楽しめるかな、と。
ええ、まんまと乗せられましたよ。
謎本購入後、一刻も早く中身を見たくなり、コーヒーチェーン探しましたが近くのスタバは満席。ちょっと歩いてまたスタバを覗いたけど満席。読みたい読みたい!もう駿河台の行きつけのエクセルシオールしかないと思って足早に向かいましたが、道中いても立ってもいられなくなり、こりゃ辛抱たまらんと封を切りタイトル確認したらば、そこには衝撃のタイトルが!
いやまじそう来たかー!靖国通りの歩道でマジで鳥肌立ちましたからね。そしてこのマーケティング手法の理由も腹落ちした。うん、タイトル隠さないと売れない理由も理解した。
ちなみにこのマーケティング手法で、この話思い出しました。
昔、青森のりんご農家が台風被害に遭ってりんごが9割落ちたけど、落ちなかった1割を『落ちないりんご』という縁起物にして受験生に1個1,000円で売って倒産を免れたとか。うーん、アイデア次第でものは売れるんだなやっぱりと、一介の営業マンが感心した次第です。
普段は「こんなこと書いてあったでござるよフヒヒ」とすぐネタバレするところですが、僕も読書家のはしくれ。素敵な共犯者として今回はこのさわや書店の粋な企画に乗っかり、中身の詳細については秘匿させていただこうと思います。
開けるまでのドキドキ含めて810円。損はないと思いますよ。
なお、本当に中身は面白かった。というか衝撃だった。さわや書店の長江さん、普通だったらこの本は手に取ってないです。こんな企画を用意してくれてありがとうございまーす!と、感謝すること必至なのでした。