父の80歳と母の還暦祝いを兼ねて鹿児島旅行に行くことになった。僕と妻と姉が連休取得を年度末にブチ込むというスタンドプレーにより実現したこの旅行は来週月曜出発である。なお、残念ながら妹は仕事の都合であえなく東京ステイとなった。年度末に1週間も休みが取れることの方が珍しいのだ。
とはいえ、無論僕の方も順風満帆にこの休暇が取れたわけではない。携わるプロジェクトは佳境を迎えているにも関わらず未だ最終形の仕様を模索し、契約や検収も期限までのギリギリの日程でなんとか体裁を保つレベルでお茶を濁し、何時になっても連絡の取れないクライアントに鬼電をし、この後に及んで間違えてくる外注先の見積にブチ切れ、三六協定だけは遵守するよう工作を入れ、毎日遅く帰って飯を食い逆流性食道炎の一歩手前まで追い込まれている状況なのである。
そんな最中、1週間の休暇を取るために先週突貫で引き継ぎ資料を作り後輩に全部ぶん投げてやったら、「もうホントお腹痛くなってきました…」と今にも消え入りそうな声で図体のデカい彼は呟いたのだった。
そんな状況において鹿児島旅行の計画もなんとか組んでみたのであったが、どうしても行ってみたい店が浮かび上がった。黒豚しゃぶしゃぶの名店「あぢもり」である。誰もが皆「あぢもり」はいいぞと口を揃え、僕が信頼を置く化学調味料信者の後輩M田を以ってしても「死ぬほど最高でした」と評価する店である。なお、この旅行は親父の一存により夕食は2日続けてホテルのバイキングとなることが決定している。昔、件のホテルのバイキングがえらく良かったらしく、親父は並々ならぬ期待を寄せているのだがネットの評価を見ると酷評こそあれ、ポジティブな評価は見当たらないのであった。
※那覇で食べたアグー豚しゃぶしゃぶ「まつもと」超えなるか！？
ただ、これは親父のための旅行でもあるため、ひとまず「あぢもり」は初日の昼食にセットすることにし、電話してみたところ運良く予約が取れてしまった。ポン酢じゃなくてスープと卵で食べるしゃぶしゃぶってどんなんやろ？と小躍りしてたところ、父からのラインが入り「初日は熊本の人吉でうなぎを食うぞ」とのことだった。
別日に誘導しようととしたが全く聞く耳を持たず、万が一「あぢもり」が親父の口に合わなかった時の罵詈雑言は容易に予想され、すでにうなぎの口になっている親父の転向は見込めず、あえなく「あぢもり」に別日での予約可否を確認したが、今月は全ての時間帯が予約で埋まっているとのことだった。さすがの人気店である。予約が取れたことが奇跡だ。
そのため僕は親父が狙っているうなぎ屋に電話をすることにした。旅行初日に営業しているかを一応確認し、営業していてもしていなくても「その日は休みだったよ」と親父に言うという一計を案じたのである。休みだったら万々歳、営業していたら僕の良心が痛む、と言う算段である。意を決して電話をしてみたところその日はビンゴで休みとのことだったので僕は小さくガッツポーズをした。店が開いてなくて喜んだことは初めてである。
次の課題は夕食バイキングの回避である。いくら素晴らしいバイキングとはいえ2日連続はいただけない。また、メンバーに大食いは一人もいないため、これはもうつらたにえんである。食傷である。せめて2日目のバイキングをキャンセルし、他の鹿児島グルメをセットしたいのだが、姉は変更して外した時にめちゃくちゃ言われるリスクを考え及び腰である。そのため僕が立ち上がり、責任を持って皆が満足する店を選ばなくてはならない。もう旅行は明後日だ。至急鹿児島グルメ情報を求ム。
