妄想癖がある人にお気に入りの妄想の内容を聞くのが十人十色で面白い。
後輩Sの妄想の舞台は音楽室。突然の大地震で天井が落ちてくるんだけど音楽室の天井は音響効率を高めるためジグザグで工場のマークみたいな形になっていて、そのジグザグのザグの部分に上手いことハマって助かり、同じザグにハマった女子に「大丈夫？」と声をかけ親密になるというものだった。ちなみに嫌いなクラスメイトはみんなジグの部分にぶち当たって死ぬらしい。
ちなみに僕の場合はこうである。教室で座って授業を受けてると首の高さにバカでかい鎌が出現し、一振りでクラスメイト達が首チョンされるというものだ。HUNTER×HUNTERでカイトが敵に取り囲まれた時に気狂いピエロ（クレイジースロット）という念能力を発動し、デカい鎌を出し一振りで周囲の敵を倒すのですが、丁度その塩梅で鎌が迫ってくるんです。だからその危機にいち早く気づいた僕が「みんな伏せろ！」って叫んで、近くの女子にタックルして伏せさせたりして、嫌いなやつだけ伏せずに死ぬというもの。こんな調子で授業中は上の空だった。
両者に共通しているのは嫌いなやつだけ死んで女子を助けるというものである。これは妄想あるあると言えましょう。
日々、超大作を練り上げている者もいる。僕の旧友は毎晩の妄想をストーリー仕立てにして、昨日の続きからの妄想を布団の中で楽しんでいた。そいつの妄想は、ポッキーのCMの頃のガッキーが黒の組織に追われていて、なぜだか自分のボロアパートに逃げ込んできてかくまうというものであった。迫りくる黒の組織から隠しながらガッキーを育てていくのである。ちなみにガッキーに何か手を出すことは一切ないとのことだった。僕はこの話を聞いて、端的に予備軍だな、と思った。
音楽室の奴もしかり、彼らは30歳を超えてなお、未だに寝る前にこういう妄想を楽しんでいるという。妄想の中では何をやっても自由だし、金も一切かからない。出口のない悩みをぐるぐるさせるよりずっと健全と言えましょう。悩みが尽きないあなた、ここらで毎夜のルーティンに一つ妄想を組み込んでみてはいかがですか。
