キジ猫世間噺大系

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『空飛ぶタイヤ』に見る日産・スバル・神戸製鋼の内部告発

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カーメーカーの不正を扱った池井戸潤原作の映画『空飛ぶタイヤ』が絶賛公開中だ。「世紀の大逆転エンターテイメント」と、ネタバレ全開の絶望的なまでにセンスのないキャッチコピーにいささか萎える。「反撃開始!」とかやめてあげて!!

この映画の題材は、昨年発覚した日産・スバル・神戸製鋼の不正問題にリンクすると思ったのでちょっと考えてみた。

『空飛ぶタイヤ』あらすじ

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ある日突然起きたトレーラーの脱輪事故。整備不良を疑われた運送会社社長・赤松徳郎(長瀬智也)は、車両の欠陥に気づき、製造元である大手自動車会社のホープ自動車カスタマー戦略課課長・沢田悠太(ディーン・フジオカ)に再調査を要求。同じころ、ホープ銀行の本店営業本部・井崎一亮(高橋一生)は、グループ会社であるホープ自動車の経営計画に疑問を抱き、独自の調査を開始する。

それぞれが突き止めた先にあった真実は大企業の“リコール隠し”ー。 果たしてそれは事故なのか事件なのか。 男たちは大企業にどう立ち向かっていくのか。正義とはなにか、守るべきものはなにか――。

実際に2002年に起きた三菱自動車のリコール隠し事件を題材としていて、もはやリーマンチャンバラの名手である池井戸色全開なことは明らかだけど、リアルタイムで起きてる大企業の問題とリンクしているタイムリーな映画だと思った。 話題になった問題の概要はこんな感じ。

日産不正検査問題とは

日産自動車は2017年9月29日、国内の日産グループ全6工場で製造した38車種116万台で、完成検査の一部を、正規の検査員以外の無資格者が実施していたことを発表した。
無資格者が実施した検査書類では、正規の検査員が実施したように捺印が偽装されていた。本問題に対しリコールが決定し、実に250億円もの費用がかかる見込。入魂の新型LEAFの発表直後というタイミングも悪かった。

なお、社長の謝罪会見後も不正検査が行われていたことが発覚して新車出荷停止に。やっちまったな日産・・・後追いでスバルまで同様の不祥事が発覚して、制度が悪いという説もあり。てか日産の不正が分かった段階でスバルは名乗りでなければならなかったのではないか。「俺も俺も、俺もだった」と。

神戸製鋼品質データ改ざん問題

神戸製鋼所では2017年10月8日、神戸製鋼によるアルミと銅製品の一部で強度などのデータ改ざんが明らかになった。不正製品の供給先は500社にも登り、その不正の習慣は40年以上前に遡るとか。ご丁寧に不正の手引書を作って引き継いでいたことまで露見してしまった。


いずれも不正に関しては組織的な指示が働いていて、長年やってたルーチンが表面した形みたいだが、どうやら発覚元はいずれも内部告発のよう。はっきりとは報道されないが、まぁこの手の不祥事はたいてい内部告発で露見する。

全く表には出てこないけど、内部で行われていた不正を表面化させようと動いた人物がいるはず。

『空飛ぶタイヤ』も内部告発

で、「空飛ぶタイヤ」。核心的なネタバレは控えますがリコール隠しが発覚する原因がやはり内部告発だ。この内部告発の理由がストーリーの肝なので明言は避けるのですが、というか十把一絡げでない登場人物の思惑が渦巻きすぎて一言では言えないのですが、だいたいこんな理由があると思う。

 

➀単純な正義感から不正を見逃せない

➁組織のためを思ってあえて告発する

➂組織への忠誠心が下がりやぶれかぶれで告発する

 

会社のために不正を告発するという人もいれば、会社のために不正を告発しないという人もいて、大部分の人は後者だと思うけど、ちきりんが下記記事で述べているような事由も大いにあると思う。

ちきりんの記事を要約すると、組織が働く人を大事にしなくなったから、共同体としてのロイヤリティが下がり不正リークがされやすくなった。といった感じです。

いずれにしても、色んなメディアの発達や雇用形態の多様化により、これまで露見しなかったことが露見しやすくなった、ということは間違いなく言えるんだろうな。

内部告発者のその後

それで気になるのは内部告発者のその後の末路なんだけど、やっぱり何らか処分を受けることになって「内部告発は身を滅ぼす」と後悔している人がたくさんいるようだ。組織が受けるペナルティ以上の辛酸を強いられる可能性が高いと思うけど、それでも内部告発をやる必要があるかどうか。

もし自分が当事者だったら、お世話になった人達を敵に回し、共に働いてきた同僚達を裏切り、場合によっては家族にも迷惑をかける。内部告発ってそんな決断だ。見て見ぬ振りさえしておけば平穏無事に時間は過ぎていくけど、それが結局会社のためになるかも微妙。

やっぱり内部告発する人はとんでもなく重い決断を自分の中で下していると思う。日産にもスバルにも神戸製鋼にも、表に出てこない彼らが存在していることを思うと、僕は一人胸が熱くなる。

ちなみに、『空飛ぶタイヤ』の内部告発者がどんな顛末を辿るのか、それは是非自分の目で確かめてみてください。

終わりに

原作厨の僕が強いて言うなら、主人公の赤松はチビハゲデブの脂ぎったオッサンでならなければならないし、嫁は生活感のある一般人でならなければならないんですよ!長瀬智也と深田恭子って・・・ディーンは腐ったホープ自動車など辞めてモデルに転身すればいいと思いました。違うか。