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【後妻業の女】ちょいネタバレ感想 サイコパスものはやっぱり面白い!

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※この記事には『後妻業の女』の若干のネタバレが含まれています。が、観覧前に読んでも映画の面白さに特に支障はないと思われますので皆さん是非読んでみて下さい。

 

巷では『シン・ゴジラ』や『君の名は。』が話題ですが、僕は電車で広告を見た時から伊丹十三作品に雰囲気が似ている『後妻業の女』が気になっておりまして、ついに昨日観にいってきました。というか、この映画人気ないのか、はてなブログでもレビュー記事が見当たりませんね。一人レイトショーで観ましたが、観客は僕含めて4名。おいおい大丈夫かと思いつつしっかり楽しみました。

結論から言うとこの映画、伊丹十三作品とは趣が大きく異なっており、どちらかというと『龍三と7人の子分たち』に通じるブラックコメディ要素と、『黒い家』や『冷たい熱帯魚』に通じるクライムサスペンス要素が混ざったような作品で、強烈な毒々しさがありつつもエンタメとしてかなり楽しめました。今日はこの『後妻業の女』について若干ネタバレありでレビューします。


ちなみにタイトルは似てますが、伊丹十三系の社会派エンタメを期待して行ったら肩透かしかも。伊丹映画はこちら↓にまとめています。

超簡単なあらすじ

「武内小夜子63歳。若くして夫を失った熟年女性です。好きなことは読書と夜空を見上げること……わたし、尽くすタイプやと思います。」
結婚相談所主催のパーティーに現れた武内小夜子(大竹しのぶ)の魅力に、男たちはイチコロだった。80歳の中瀬耕造(津川雅彦)もそんな一人だった。小夜子と耕造は互いに惹かれ合い、結婚。二人は幸せな結婚生活を送るはずだった……。
しかし、そんな小夜子の正体は後妻業。金持ち老人を色香で虜にし、結婚相談所所長の柏木亨(豊川悦司)とタッグを組み、後妻に入って金品を巻き上げる手口を繰り返してきた後妻業のエースだったのである!次から次へと後妻業を繰り返してきた小夜子と柏木、2人の悪事を暴こうと奔走する被害者遺族の中瀬朋美(小野真千子)、調査に協力する探偵本多(永瀬正敏)、絶倫の不動産王舟山(笑福亭鶴瓶)、柏木の情婦繭美(水川あさみ)が織り成す愛とお金のエンターテイメントが今始まる――!!

大竹しのぶ×サイコパスの組合せはリアルガチ

頭の回転の速さ、口のうまさ、臨機応変の変わり身とごまかしを全て兼ね揃え、特に罪悪感のなさは右に出るものなしのガチサイコパスを大竹しのぶが演じています。これが観ててマジで怖い。こんなおばちゃんいそう~とかなりのリアリティなのだ!というか、実際に後妻業で逮捕された人たくさんいますよね。だいたいなんでこんなBBA(もしくはデブ)が!?と思わずにはいられないのですが。
それにおいて、大竹しのぶの演技はガチですね。『黒い家』(1999年)というホラー映画はご存知ですか?個人的に僕はこの映画がサイコパスものの走りだと思っているのですが、この映画でも大竹しのぶはガチモンのサイコパスを見事に演じきっています。こちらもホラー映画でありながら笑える要素が散りばめられた大好きな傑作なのですが、終盤の大竹しのぶのイッチャッテル感がまじでヤバイです。特に、「乳しゃぶれ~~!!」のくだりは恐怖と共に爆笑ものです。恐怖と笑いという相反する2つの要素をうまく融合させた作品はあんまりないですよね。一見の価値ありです。

 

さて本作では、序盤で大竹しのぶが津川雅彦を殺す描写がありますが、その手口が注射器で血管に空気を入れるというもの。その時の語り口がマジでサイコパスそのもの。
そういえば、僕の実家の九州の片田舎にとんでもないヤブ医者がおりました。風邪を引いて病院に行くと、待合室では進研ゼミの案内に同封されている漫画冊子が本棚に並んでおり、何が悲しくて「お母さん、今度は僕本気だよ!ゼミやらせてよ!」というフレーズを病院で見なければならないのかという気分になる。注射をする時は、若干注射器に空気が残っており、皮膚が気泡でプクプクなる瞬間が見られます。いや、空気入れたら死ぬから!

関西弁の迫力がまじですごい

全編において関西が舞台となっており、東成、羽曳野、北新地等のローカル地名や、大同銀行等の実在の企業名が出てきてかなりのリアリティ。そしてそれ以上に関西弁の迫力がヤバイ。トヨエツは関西出身だからいいとして、東京出身の大竹しのぶが完璧な関西弁を使っています。トヨエツとの掛け合いはまさに関西人のノリそのものでありました。なんで大竹しのぶこんなに関西弁うまいんだろ。関西人と付き合ってたのかな。(と鶴瓶が言っていたらしい)トヨエツの「警察でもない人間に会員様のプライバシーは明かせまへんわ」とか永瀬正敏の「公共の探偵は警察でっせ」とかコテコテのセリフがまじでいいんです。

個人的に関西弁の迫力で一番好きな映画は北野武監督の『アウトレイジビヨンド』。たけしと中野英雄が大阪の花菱会に杯をもらいに行くと、西田敏行と塩見三省に関西弁でまくし立てられるのですがこれがマジで熱い、そして怖い。「戦争にでもなったら誰が責任とるんじゃボケ!!」と銃口を向けられたたけしが「撃ってみやがれ!とっとと撃ちやがれ、チンピラ!おもちゃかそれ!」と啖呵を切るのですが、僕は邦画史に残る名シーンだと勝手に思っています。話が反れました。アウトレイジもまた別でレビューしたい。

主要キャラが総じてクズ!

これは言うまでもないですね、一応クライムサスペンスものですから。特にトヨエツがいい味だしています。キレ者キャラで大竹しのぶのブレーン的なポジションではあるのですが、これが色ボケで情けなくてまじでクズ。トヨエツこんなキャラできるんだ!って感じ。そしてなんと、探偵役の永瀬正敏も予想を裏切りクズ。どうクズかは本編を見て確かめてみてください。僕は途中まで気づきませんでした。大竹しのぶの放蕩息子で風間俊介も出てくるんですがバカなチンピラ役がどハマリしていて笑いました。とりあえず声でけぇ!みたいな。
あと、クズキャラではないんですが、小野真千子もいい演技でした。気の強い被害者の娘を見事に好演しており、焼肉屋で大竹しのぶと取っ組み合いのケンカをするシーンは観てる側も完全に引き込まれてしまいました。
余談ですが、飲み会の時に盛り上がる話題は、誰かが誰かにキレた話、とカラテカ入江が言ってましたが、僕も同意してしまいます。フィクションでも誰かがキレるシーンはマジでおもしろい。僕はよくYoutubeでキレ芸を見てますが、南海キャンディーズ山ちゃんのキレ芸は一級品だと思います。また話が反れました。

 

後妻業川柳!

この記事書くために『後妻業の女』のHP見てたんですが、クソ面白い後妻業川柳なるものがありましたので紹介します。

 

「夫」でも ひっくり返せば 「¥」になる

 

うまい!そこに気づくとは天才か。皮肉も効いててめっちゃすごくないすか?この川柳。ただただ感服。ちなみに8,643句の応募総数の中から最優秀作品として選ばれたとのこと。納得。

 

もっとこういう映画があっていい

と、言うわけでとりとめもない映画紹介になりましたが、『後妻業の女』は観て損はない映画でした。結構テーマは重いけど、基本的にはコメディタッチで展開も間延びせず、笑えて終始飽きさせません。なんかライトなタッチで笑える邦画、少なくなったと思いませんか?
この前伊丹十三映画の紹介記事を書いたときに、「邦画はこの方向が1番面白い。スターウォーズみたいな作品はハリウッドとガキにやらせておけばいい。」とブコメくださった方がいましたが、僕も完全に同意。

今の日本の問題をライトタッチで楽しめて勉強にもなる映画、もっと出てきてほしいな。ちなみに『後妻業の女』で勉強になったことが一つ。遺言状は代理人の立会いなしで開封したらダメですよ!これは知らなかった。