コメントいただきました「るう」さんのリクエストにお応えして、キジ猫話をお送りいたします。
もう5年以上前の話、ペット禁止の僕の部屋に猫を連れ帰ったのは真冬のことでした。拾った時はまだ生後4ヶ月くらいでヒモで遊んでいると乳歯が抜けるくらいの頃だったんですが、猫はもちろん世の中の怖いことを全然知らなくて、だから僕に捕まったというのもあるんですが、水の怖さすら知らなかったんですね。
ある冬の日に僕が湯船に湯を張ってシャンプーしていたら猫が風呂蓋の上に登ってきて水面を覗いてたんですよ。猫は目が悪いというのでどういう風に見えていたか定かではないんですが、流石に本能で水は避けるだろと思って静観してたら、次の瞬間おもむろに水の中に飛び込みましてね。バッシャーつって。
シャンプーの泡もそのままにすぐに猫を引き上げてバスタオルで拭きまくったんですが、本人も相当ビビりあげたらしくギンギンのギンになっちゃってました。それから猫が濡れてしまったものですから部屋を真夏にしなきゃいけないと思って暖房をMAXにして猫が乾くのを待ちました。
そしたら部屋が真夏を通り越してサウナ状態になりまして。息するのも辛いみたいな感じになったので、ちょっと換気しようと思って縁側の窓を開けて網戸にしたんです。僕はそのまま自分のドライヤーをしたりなんだりしてたんですが、猫は外を見るのが好きなので縁側に向かったのを目の端で捉えました。
それから一通り自分の用事が済んで猫を見に行ったら、外からの寒風に晒されてその肢体をブルブル震わせながら外の何かを見てたんですよ。思うに、網戸に近づく=寒い、という因果律を理解してなかったのでしょう。そして寒さよりも外の見たさの方が勝ったみたいな。こっちの危機管理もガバガバかい!みたいな。
乾いた猫はフカフカのフカになったので思う存分モフりながら寝ました。誰に教えられるでもなく猫トイレを使いこなすこの猫を僕は感心してた節があったんですが、水の恐怖は本能に組み込まれてないんかい!と思いました。彼女はこうして水の恐怖を学び、風呂場に近づくことがなくなったのでした。
やがて時は経ち、今や大人となった猫は自ら湯船に浸かるように。
見てくださいこの貫禄。おっさんよろしく湯船の縁に肘をかけています。これぞまさしく剛の者。もう、ボーボー。
上からみるとこうなってました。
エッシャーもびっくりの錯視でした。