キジ猫世間噺大系

一人暮らしで猫を飼った男の末路

【ネタバレなし】カメラを止めるな!感想。ここ10年で最高の日本映画という評価は伊達じゃない

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ここ10年で一番面白い日本映画があるという噂は下記のブログ記事で知った。いやいや持ち上げすぎだろと思ったが、記事はネタバレなし短文ながらブクマ500以上とバズっておりタダならぬポテンシャルを感じていた。映画は予算300万円で役者は全員無名とのこと。いちサブカルクラスタを自称する人間として一度観るべきだと思っていた。

伏線マニア垂涎の作品のようでネタバレを見てしまうと野暮らしい。事前情報なしで行くのは鉄則で、それを忠実に守ったらマジで面白すぎてビビり上げました。

池袋シネマ・ロサの長蛇の列

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で、この映画、6月末から都内の映画館2ヶ所で上映されたとのことだが、本日7/29時点で全国100館に達したらしいのだ。世の中的にもバズってるらしく当日券しか取れない昭和感が半端なく漂う池袋の古い映画館シネマ・ロサには長蛇の列ができていて面食らった。45分も並ぶことになり次の回のチケットしか取れなかった。

シネマ・ロサの一階はゲーセンになっておりメダルゲームに興じるドロップアウトを横目に列に並び、並ぶの嫌いなので僕もドロップアウトしようかと思ってた。そんでようやくチケット売り場に到着したけど満席御礼過ぎて前から3列目一番端の席しか取れず、これで面白くなかったら承知しねーぞと思ってさ、真夏の映画館特有の不快なチンポジに居心地の悪さを感じながらの鑑賞と相成りました。

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なお、ゾンビ割りといってゾンビメイクでの来場で1500円になり、生き返り割りといって次回以降半券提示で1000円になる。ゾンビメイクの人なんて見なかったけど、あのロサ会館をゾンビメイクで並ぶのは相当な覚悟がいると思われる。

俺の笑いのツボずれてんのかな、と思った

みんなも言ってる通り、この映画は絶対絶対絶対ネタバレなしで行くべきなのでここにはネタバレ書きません。でも少しだけ言いたい。この映画めちゃくちゃ面白いわ。ポスター見たら分かると思うんだけど、一見B級ホラー映画でほとんど期待してなかったのもあるかもしれないけど。

この映画のタイトル「カメラを止めるな!」の意味は始まってしばらくしたら分かる。そしてこの序盤が全ての肝となる。で、前述の通りこの映画は伏線もの。全然面白くもないシーンで笑いが起こる。「今笑うところだっけ?」「俺の笑いのツボそんなにずれてたっけ?」と不思議な現象が起こるが後で理由が分かる。というかおい、2回目鑑賞の連中自重しろw

散りばめられた無数の伏線は、後半に爆笑に次ぐ爆笑を持って回収されていく。いやほんと、これだけ映画館で笑いが起こるのを始めて見た。観客席でみんな一体となってゲラゲラ笑ってるんですよ。ほとんどお笑いライブクラス。それもブラマヨ級のね。手垢のついたゾンビクラスタが最高に斬新な仕掛けによって全く新しい光景を魅せてくれる。その手法に感動すら覚える。僕は一人で観に行ったんだけど、一人で観るには余りに勿体ない作品だと思った。隣の人と握手を交わしたいとすら思った。流石にやめたけど。

映画って夢があるね

いやね、映画は脚本が全てというのは低予算密室劇の傑作「十二人の怒れる男」を観た時から心得てるけど、今回再認識しました。なんでも金かけりゃいいってもんじゃないんだよな。成金映画はハリウッドに譲るとしてさ、日本はもっと脚本で勝負していくべき!その点この映画は完璧でした。

若干34歳の上田慎一郎監督の元に集まった役者は皆無名ながら、映画は奇跡的な出来栄えで、こんな作品に携われた人達に嫉妬すら感じた。監督はこう言う。

「この映画は二度と撮れないショットが詰まったあの夏の僕らのドキュメントでもある。手に負えないことをしないで、何が映画だ」

物作りへの圧倒的な情熱とエンターテイメントを貪欲に追い求める姿勢はあまりにも眩しすぎた。あのワンカットの輝きは、他人には、いや監督すらも決して再現できないだろう。ガチのトラブルやイレギュラーな事態が多分に織り込まれてるからだ。美は乱調にあり。想定外が含まれてこそ完璧なのだ。

この監督は借金まみれだったらしいけど、これからインディーズも次回作も全部見ようと心に決めた。外野が一つ言えることは、この映画メンバーの打上げは間違いなく楽しそうということだ。チクショウ!

突然の演者の舞台挨拶

エンドロールが流れた後、サプライズで演者の一人が舞台上に現れた。さっきまで爆笑と共に観てたあの演者が目の前にいるのだ。最高にあったまった劇場でこれまた小ネタを交えてポスターとパンフレットを宣伝するもので、拍手喝采。ドッカンドッカンウケてた。僕もまんまと800円のパンフレット買わされた。

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サインをもらう時に少し話させてもらったんだけど「あれよあれよと映画がブレイクして全然頭が追いついてないです」だって。

「舞台挨拶は毎回やってるんですか?」と聴いてみたところ、「演者は皆んなお金持ってないからバイトの合間に舞台挨拶に来てます」とのことだった。彼らは今サクセスストーリーの真っ只中にいて、その一瞬に携われたことが少し嬉しかった。

終わりに

総括すると、この映画は全くB級に非ず。歴史に残るジャパニーズエンターテイメントの金字塔だ。第二の三谷幸喜の爆誕、いや三谷超えの瞬間を見ずしてどうする。僕の生き返り割りが発動する日も近かろう。

最後にこれだけ言わせてほしい。どれだけ並んでもいい、映画館へ急げ。誰かに捕まったら「ポンッ!!」で逃げろ。以上!