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一人暮らしで猫を飼った男の末路

埼玉に眠る世界最大の地下神殿「首都圏外郭放水路」は水神をも怖れぬスゴい施設だった

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語感のいい日本語っていいですよね。

例えば、「天皇皇后両陛下」「 墾田永年私財法」「禁中並公家諸法度」「王政復古の大号令」「首都圏外郭放水路」

首都圏外郭放水路・・・

なんて甘美な響き。。今パソコンに向かい一人思わずつぶやいた。 そう、この首都圏外郭放水路こそが埼玉が誇る巨大地下神殿なのだ。今回は休日を使ってその中に潜入してみた。

 

首都圏外郭放水路とは

そんで、やたらと語感のいいこの施設、何を隠そう首都圏を洪水から守ってくれている大規模治水施設なのである!そもそも埼玉・千葉・東京にかけての関東平野は太古の昔から低地のため浸水被害が多発していて、家康の時代に利根川の流れを付け替えたりして対策をしてきたんだけど、それでも大雨の度に水浸し。特に中川・綾瀬川流域は大きな被害を受けていました。

その上居住地の拡大に伴い、浸水エリアの人口がどんどん増えてきた。川の付け替えをするにも既に居住地だらけでどうしようもない。そこで考えたのが地下に巨大治水施設を作ること。かくして2006年に14年の月日を経て完成した地下50m、全長6.3km、内径10mの放水路は、浸水に悩まされていた流域の被害を確実に減らしたのであった。

 

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                   参照:概要 | 施設紹介 | 首都圏外郭放水路

上記の通り、江戸川(左)と大落古利根川(右)の間のエリアは特に低地で、かつ川がたくさん流れていることから、雨が降ったらすぐに洪水になるんですね。そこで地下に川の水を逃がす放水路を設け、江戸川へ流すことで治水を行うという、まさに人類の叡智を結集した水神様をも怖れぬ画期的な施設なのである!

今回は江戸川への放水部である「庄和排水機場」へ潜入する。ちなみに、潜入に際しては予約が必須で、当然ながら雨が降ったら施設を使うため見学中止になる。参加費は無料だ。

 

南桜井駅に到着

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電車を乗り継ぎ東京から南桜井駅とかいう埼玉東部の地へ上陸。まじで何もない・・ここからバスで庄和排水機場まで行くのだけど、土曜日の特別見学会とあってバス乗り場には長蛇の列。我々は4人で来ていたため数の利を活かして優雅にタクシーで行くことにした。ちなみにこの時点で既に昼飲み@磯丸水産大宮店の影響で酔っ払っていたので、もう寒いし帰ろうぜー、とずっと思っていた。

 

庄和排水機場・龍Q館

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かくして一行は庄和排水機場に到着していたのだが、雨がぱらぱら・・まじで寒すぎる。 にもかかわらず、右に見える車は暴風雨体験車両という衝撃 is BIG!!この寒さの中みんなこぞって暴風雨体験をしているものだから見てるこっちまで寒かった。

 

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館の中に入ると、首都圏外郭放水路のメカニズムを説明する映像が。何やら難しいことばっかり言ってて、この時点で首都圏外郭放水路のことをデカいドブか何かと勘違いしていた私にはさっぱり理解できなかった。頭が悪いというのもあるだろう。

でも、見学後にもう一回見たらめっちゃおもしろかった。得てしてそんなもんである。

 

施設内部へ潜入 

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 見学の時間となりましたので、この第3新東京市ジオフロント入口のようなところから潜入する。

 

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めっちゃ深い。。かなりの長さの螺旋階段を降りたその先には、目を疑うばかりの光景が広がっていた。

 

突如として現れる巨大神殿

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ドドーン!!

階段を降りたその先に、突如として現れる巨大神殿。こここそが首都圏外郭放水路見学のハイライトである。圧倒的すぎて神々しさすら感じるこの神殿は、長さ177m・幅78m・高さ18m、59本の巨大なコンクリート柱が林立する「調圧水槽」という施設である。地下トンネルから流れてきた水の勢いを弱め、江戸川へスムーズに水を流すための重要施設なのだ。

まさに現代のパルテノン神殿。これから先、文明が滅びた後、この地下空間の存在を見つけてしまう誰かのことを思うと胸が熱くなる。彼はこう叫ぶだろう。「ユーレカ!こんな辺境にこれだけの神殿を作る文明があったとは!強力な指導者がいたに違いない」とね。ここが様々な特撮に使われているというのも納得だ。

 

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内部では改めてメカニズムの説明を聞くことができる。単に映像だけ見た時と異なり、まさに施設内部そのもので聞く説明は圧倒的な臨場感を持っており、お姉さんが脳内に直接語りかけているかのように分かりやすかった。 

 

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この「調圧水槽」、水槽と言うだけあって大雨の際は水が溜まるようになっている。柱の上部に「定常運転水位」と書いてあるのですが、ここまで水位が上がるということですね。なるほど定常運転水位以下は色が茶色くなっているぞ。ていうか、みんな普通に歩いてるけど一回水が溜まって引いた後の状態がヤバそう。魚やゴミが散乱し、異臭を放っているのではなかろうか。

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これは通常見ることができない「インペラ」 。この巨大なプロペラが調圧水槽に溜まった水に遠心力と揚力を与え、地上へ吸い上げていく。吸い上げられた水は江戸川へ放流されるという塩梅だ。年に1回くらいしか見られない貴重なものらしい。こいつをあらわにするために一生懸命水をかき出したと案内員の人が言っていた。ご苦労様です。

 

ポンプ室見学

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このポンプ室も普段見ることができない重要施設だ。巨大施設をコントロールする心臓部であるこの機構は、ガスタービンと写真の戦車みたいな減速機でもってインペラを回し、実に1秒間に200㎥(25mプール1杯分)もの水を排水する。

戦車の周りにたくさんついているリンゴアメのような物体は消火機構だ。戦車が高熱になり火災の恐れがある際に発動し、リンゴアメから二酸化炭素を噴出するという。恐るべきリンゴアメだ。 

 

地上はサッカーグランド

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地下の見学を終え地上に上がると、ただのだだっ広い空間としか思わなかったこのグランド の下に地下神殿が眠っていることをリアルに実感できる。写真では片付けに入っているが、かなりの数の屋台が出ていて賑わっていた。もちろんその中にはリンゴアメも売っていて思わず二度見した。

 

おわりに

かつてこの辺りは水害との戦いに明け暮れた地域なんだけど、こうして人類の手によって治水が行われ、人類にとって都合の良い地域に変化させていったわけで、昔の人は水害を神の怒りと捉えて祭祀を行い、あるいは地域に水に関連する地名を付けて後継にアラートするくらいしかできなかったのだけど、ついにここまで来たか人類。感慨深い。

水神の意に反するかのような治水機関が、図らずも神を崇める大神殿の様相を呈しているところが実にアイロニカルだ。

そして単なる一般市民である僕としては、治水によりエリアの地価が上がったのか?とかそんなことが気になるお年頃なのでした。

 

以下、参考情報です。大人の社会科見学にぜひ。

・アクセス:最寄の南桜井駅からバスorタクシーで15分ほど
・住所:埼玉県春日部市上金崎720
・電話番号:048(747)0281
・見学会:火曜~土曜開催
 ※ 土曜は月2日の開催

・公式HP:首都圏外郭放水路