突然ですが、ションベンについての思い出を記そうと思います。
あれは僕がまだ中学生の時でした。土曜の昼下がりだったと思うんですが、父がね、「新レシピを開発したから味見をしてみろ」と二階の部屋で風来のシレンをしてた僕を呼んだんです。それが地獄の始まりだったんですが。一階の台所に降りていくと、雪平鍋に何かを煮詰めた琥珀色のナニカを作ってました。
「ちょうど冷めたところだからちょっと味見してみろ」
そういって小匙に取った琥珀色のザラメみたいな物体を渡してきたんです。普通に食べてみたんですが、何やら甘い砂糖のようで、独特の臭みがある決して美味いとは言えないシロモノでした。これ何?と尋ねたところ、父の返答に言葉を失いました。
「俺のションベンぞ」
当時の時代背景として、確かに飲尿療法なるものが流行っていて、かの”さくらももこ”ですら飲尿している事実をエッセイに書く始末で、飲尿は一定の市民権を得ていたと思います。健康オタクであるところの父も、どこから仕入れてきた情報か分かりませんが飲尿を試したくなったのでしょう。僕はションベンを砂糖で煮詰めたものを食わされるという、この世のものとは思えない体験をしていたのですが、父は家の絶対権力者だったので、
「へぇ、結構いけるねぇ」
などと戸愚呂弟みたいな口調で返事していたのでした。今考えると”一生絶許”もんなのですが、当時のトリッキー過ぎる状況を前にしてブチギレられなかったのを未だに悔やんでいます。その後、怒涛の勢いで鬼のように口をゆすいで枕を濡らしたのは言うまでもありません。分かりますかね?時間が経つ毎に膨れ上がってくる嫌悪感が。耐え難い屈辱が。甘くしといたから食べやすかろ?じゃねーんだって!!!!
ほろ苦い、いや、ほろ甘いションベンの思い出です。
あと、これは最近の話ですが、健康診断で会社が提携している医療施設に足を運んだんです。
毎年のことながら受付を済ませたら、着替えて尿検査の尿を採取するよう指示を受けます。今は尿検査もシステム化されてて、トイレで紙コップに10mlくらい入れて、トイレに併設された小窓に提出するという塩梅でした。
小中学生の時はメスシリンダーみたいな名前入りの透明の容器に何色か分かる状態で採取させられて、朝教室後方に置いてある箱の中にどんどん提出していくシステムでプライバシーも何もあったもんじゃなく、クラス全員のションベンの色が把握できる状態だったのですが、世の中良くなるもんですね。
で、トイレで紙コップ提出しようとしたら、なんか前にいたヒョロガリみたいな奴がソロリソロリと和泉元彌みたいな感じでゆっくり動いててクッソトロかったんですね。ヘイヘイヘイ!とっとと動かんかいや!と思ってそいつの手元を見て絶句しました。
そいつ、紙コップに波々とションベンを注ぎ、満々と湛えるその湖面を表面張力任せにキープしつつ、こぼさないように運んでたんですよ。
学生寮のときのイッキコールで「なーみなーみなみ なーみなーみなみ なーみなーみなみ奈美悦子!」というのがあったんですが、その奈美悦子コールをやる時くらいグラスいっぱいに湛えてたんですよ。年配のおっさんとかが、冷酒をこぼれるくらい注がれて「おっとっと・・ズッ」とか言いながら啜るくらいの量なんです。信じられますか?歳の頃ゆうに30は過ぎてるその風体で、おそるおそるションベンを運ぶ男が存在することを!
いや、今までどうやって尿検査クリアしてきたんだこのすっとこどっこいって話ですよ。ちゃんと紙コップにご丁寧にも「この線までションベンを入れてください」て書いてあろうが!カップ焼きそばみたいにちゃんと線が書いてあろうが!そんなに大量に提出しなくてもおめーのションベンの蛋白や潜血の異常は分かろうが!献血みたいに「いっぱい提供してくれてありがとう」とかないからね!どぅ・ゆぅ・あんだーすたん?
などと言えるわけもなく、オトナなのでそいつの提出を待ってサクッと己の分を提出しました。
あと、小学校一年生の時だったんですが、ユウイチというだいぶアレな感じの友人がおり、家は床屋だったんですが、家庭環境は崩壊しているようで、お父さんはボートに行っていて家にはおらず、いつも多額のお小遣いをくれるという感じでした。お父さんが足繁く通っていたボートが何だったのかを正確に知るのはだいぶ後になってからになります。
ユウイチは小一という若さで既に毎週少年ジャンプを買い与えられている奇特な男で、「変態仮面」とかの誰も知らないネタを得意気にやってるヤバめの奴でした。僕はいつもユウイチの家に入り浸って、流行りのスーファミをやらせてもらってたんですけども。
ある日ユウイチと二人でいる時に、いつもは行かない床屋の家屋を探検してたところ尿意をもよおしまして。ユウイチにトイレの場所を聞いたところ「そこの押入れにしていいよ」とのことでした。僕も小一ながら、押入れにしてはいけないはずだ、という自制心が働いたのですが「ほらほら」とか言いながらユウイチが率先してやったので、普通にいいんだとか思って後に続きました。
大人になってから、同時期にユウイチと遊んでいたN氏にこの話をしたところ「オレも押入れにションベンさせられた」とのことでした。僕はずっとこのことを子供の頃の夢かもしれないとも思ってましたが、俄然真実味を増してきました。
ちなみにシチュエーションは伏せますが、大人になってから本来してはいけないはずのところに尿をしようとすると、意思とは裏腹におしっこ出ないということに気づきました。頭では理解しているが身体がどうしても拒絶するみたいな不思議な体験ができます。嘘だと思うならやってみてください。今すぐにでも試せます。
今日のところはそんなところです。