韓国ドラマというと、復讐、メロドラマ、交通事故、記憶喪失ときて実は兄妹といったフォーマットが水戸黄門的セオリーだが、このセオリーを踏襲しつつ絶妙な現代風の味付けに落とし込んだ傑作、それが梨泰院クラスだろう。
要素を抽出するとしたら、復讐、メロドラマあたりが該当し、勧善懲悪のお決まりの型をなぞりつつも先の見えない展開で全く飽きることなく全16話を一気に完走してしまった。
知らない俳優のドラマっていいよね
このドラマ、なんと言っても俳優が素晴らしく、配役と役者がピタリと合っている。いや、初見だからそう見えるというのが正解だろう。なんせ韓国ドラマを見ないものだから役者の本来の姿も知らなければ、他のドラマに出ているところを見たことがない。例えばこれが日本のドラマだったらキムタクはキムタクにしか見えないし、カメレオン俳優とされる山田孝之ですら先入観を完全に拭うことはできない。他方、韓国ドラマは完全に役そのものとして見れる、というのは新たな発見であった。
やっぱり主人公のパク・セロイの魅力に尽きる
やはり思うのは、主人公パク・セロイがよい。セロイは不遇である。親を殺され、中卒で投獄され、全てを失い再起をかける、というのがこのドラマの骨子ではあるが、一貫してブレず、自らを全面的に肯定する迷いの無いセロイの生き方は、いつしかあの斬新な髪型すらカッコいいと思わせる程にアツかった。
俺の人生は少し苦い
こうイソに投げかける言葉は彼が初めて漏らした弱音だったのかもしれない。これを聴いてイソは誓うのである。「彼の苦い夜を甘くしてあげたい」と。こうしてセロイはイソという諸葛亮を得ることで、理不尽に対して明確な指針を持って抗うことができるようになるのだった。以下は、終盤のセロイを象徴するツァラトゥストラの一節である。
むごい人生よ、もう一度
ほとんど武士である。「願わくば、我に七難八苦を与えたまえ」と三日月に祈った山中鹿介のことを思い出した。できれば楽に生きたいと漫然と思っているだけの僕にとっては冷水を浴びる思いで鑑賞することとなった。童貞一カッコいい童貞、それがセロイである。
イソとスアどちらを選びますか
先述のイソであるが、これが初見では絶対に見抜けない魅力の持ち主なのである。決して美人とは言えないお騒がせ少女のイソは、スアという絶世の美女のヒロインがいるため、当初はセロイとスアの邪魔をすんじゃねー、という思いで見ていたのだが、ネタバレを承知で言うならば、真のヒロインはイソである。いつしかイソを応援している自分に気づいた頃にはもうこのドラマから抜け出せなくなっているだろう。
イソとスアの対立軸を作り、イソ派とスア派の議論を盛り上げるという制作陣の意図があるのは明白だが、それでもハマってしまう。ここでビアンカ派かフローラ派かといった議論をすることになるとは思わなかった。ちなみに僕はスア派である。これだけイソをアゲていながらもやはりスアの圧倒的ビジュアルには敵わない。男は赤名リカより関口さとみなのである。スアを見るだけでもこのドラマを鑑賞する意味がある、といっても過言ではない。それ程スアはよい。多部ちゃんと指原を足して2で割って100倍かわいくした感じ。神憑り的。
クズのグンウォンと大ボス
悪役の話もしなければ。敵対勢力の「長家」という食品会社大手の御曹司グンウォンが事の発端を引き起こすのだが、これがまた徹底したクズオブクズで見てて気持ちがいい。顔も憎らしく見えてくるところが役者の凄みを感じる。温水さんの若い頃みたいな顔。そして無能設定もまたよい。IQ162のイソにハメられる時だって、イソのIQもっと使ったれよ!と言いたくなるくらい無能なハメられっぷり。脇の甘さもここに極まれりである。また、ここまで徹底した悪役を描けるのは流石韓国といったところである。徹頭徹尾中途半端なところが全く無く、情け容赦をかける余地がない。
ボスである会長は迫力がある。宮迫系統の顔でありながら、貫禄があり、ヒールとしての魅力を持ち合わせていて飽きることがない。次から次へとセロイへの攻撃の手を緩めないやり口の中で垣間見える小物感すらよい。だって半沢直樹くらいすぐに土下座しろ土下座しろ言ってくるんだもん。座右の銘は「弱肉強食」。全ての悪役がラオウみたいにカッコいい必要はないのだ。
10年間準備してそのレベルっていうね
一つ納得できないのは、セロイは10年間店のことだけを考えてタンバムを開いた訳だが、その店のクオリティが激低なのだ。客に喧嘩売るわ、店の内装はショボいわ、極めつけは純豆腐チゲがマズいわで、イソが入らなかったら即潰れてる。純豆腐がマズいのはあかんよ。というわけで自分で作ってみた。粉唐辛子を一味唐辛子で代用したが、全然モノが違うのね。でも美味しかった。
日本の俳優で梨泰院クラスをやったら
最後に、梨泰院クラスを日本でやった場合の配役を考えてみた。異論は認めます。
セロイ・・・山田孝之
顔的には東出がよかったんですがこの状況なので。山田孝之には寡黙なキャラがよく似合うと思うんです。本家よりも感情を表に出す演技に期待。 あの髪型も意外と合うから!
イソ・・・小松菜奈
ソシオパスであるイソはもちろん反社会性の表情を備えたこの人で。二階堂ふみもいいと思いましたが、ちょっとかわいすぎるんですわ。
スア ・・・新垣結衣
実は自己肯定感の低い美女ということで随分悩みましたがガッキーで。敵とも味方とも取れない難しい役どころをこなしてくれそう。ただガッキーが見たいだけだろって?その通りですがスア役と張れる美女ってガッキーくらいしかいなくない?
グンウォン・・・瑛太
かつて大久保利通というひねくれた役をやってたのでグンウォンくらいどクズの役なんて難なくこなしそう。悪い顔もすごいし。
チャン会長・・・國村隼
ヤクザをやらせたら超安定の國村さんにこの難役を。今一番土下座が似合う香川照之も考えましたが、炎属性の香川照之には会長の氷のような冷たさが出なさそうなんです。表情が豊か過ぎるし。
カン専務・・・シェリー
こんなもん顔が似てるのでシェリー一択。
グンス・・・瀬戸康史
あどけない大学生みたいなキャラかと思ったら血は争えないことを納得させるあの冷徹な男には瀬戸康史を。
ヒョニ・・・門脇麦
男装が似合いそうだし、サバサバした役が合う。
スングォン・・・加瀬亮
下っ端ヤクザがよく似合う!あんまりコメディ役を見たことないけど、キレたら怖そうなところを見込んでオファーしたい。
ヤクザの親分・・・安田顕
貫禄あって渋いけど、仁義がないことも平気でやれそうなのは安田さんしかいない。滝藤賢一や松重豊も考えたけど、やっぱ安田顕よね。
イ・ホジン・・・キンコメ今野
いじめられっ子もイケるし、インテリも意外と合いそう。演技力も折り紙つきだし。存在感あるし。絶対いいって!
セロイの父・・・大森南朋
優しそうな顔もできるし、アウトレイジのヤクザのヒットマン役は凄みがあった。今はナギサさんに引っ張られがちだけど、人情系のセロイの父に合ってると思う。
トニー・・・ムーンライトの人
これはもう本当に思い浮かばなかったです。どうやってもウィル・スミスしか思い浮かばず。。名前は知らないんですがムーンライトの主演の人にオファーしようかな。若い黒人の俳優さんということで。
キムおばあちゃん・・・木の実ナナ
とっても曲者で風変わりだけど、大物感漂わせるキムばあちゃんにはこの人。
元警察の人・・・ピエール瀧
権力に屈してしまうも、良心の呵責に苛まれる役に合いそう。垣間見える小物感もgood。このドラマで復帰してほしい。
終わりに
梨泰院クラスのこと考えてたら夏休みが終わってました。