キジ猫世間噺大系

一人暮らしで猫を飼った男の末路

真のせんべろ小倉の角打ち「平尾酒店」でマジで千円でベロベロになった

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ひょんなことから北九州は小倉の街に来ており、盟友Y氏と角打ちでも行ってみるかという話になった。角打ちは僕も初めてだったのだが、酒屋の一角で安く飲ませてくれるという北九州発祥の文化だ。

Y氏によると、ネット情報ではこの平尾酒店がかなり評価が高いとのことだった。なお、近くにも「赤壁酒店」なる有名店があるのだが、夜にはのれんを下ろしてしまうそうで、必然的に今回は夜まで営業している平尾酒店へ凸と相成った。夜7時頃の話である。

角打ちと言えば平尾酒店

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場所は小倉駅からは割と離れており、昭和の香りを残す旦過市場の中を通り過ぎると通りの角に突如として現れた。「立呑コーナー」とあるがこれに突撃するのは結構勇気が要る。


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逡巡している間にY氏がごめんくださーいと様子を伺っていた。ちょうど二人分の席が空いているようだ。

駄菓子屋のような店内

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店内に入ると狭いカウンターに既に4人のおっさんが飲んでいた。2人×2組のおっさんずは既に出来上がっていた。感じのいいおかみさんが出迎えてくれて、カウンターの向こうから丸椅子2脚を寄越してくれる。

そして、僕らの素人っぷりを見抜いたおっさんずの一人が話しかけてきた。「ここは福岡人志で出た有名な店で、兄ちゃんが座っとるとこが松本の位置で俺が板尾の位置っちゃ。取りあえず飲まんね」とのこと。

確かに松本がロケした時の写真が置いてある。「サムい」という言葉を作った天才と同じ位置にいるということに軽く興奮を覚えた。

っていうかメニュー安っす!安っす!

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壁に貼ってあるメニュー表を見るとその安さに度肝を抜かされた。ビール中瓶340円、芋焼酎190円とある。ほとんど原価である。どーゆーこと?

聞くと、そもそもが酒の卸しがメインの商売のため、本来ならば椅子を置いてはダメで、調理もNGとのこと。ただ卸しの酒をその場で飲む、というのが角打ちの起源であるとのことだ。

とは言うものの商売が成り立たないのでは?昔子供の万引きが原因で潰れた地元の駄菓子屋「佐々木店」が思い出される。「可愛がっていた子供が中学生になると万引きするようになってムカつく」と漏らした佐々木のおばちゃんの切ない顔が頭をよぎる。


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だが僕らにとってみれば安いに越したことはない。ひとまずビール大を注文。キンキンに冷えてやがるビールが初夏の汗ばむ身体に染み入る。くぅ~~~!!同じビールでもちょっといい店に行けば1,000円とか取られるから、ほんと何なんだろうね。

ソーセージ玉ねぎサラダは決してストップを言ってはならない

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おっさんによると、ここに来たら絶対このサラダは注文しろ、とのことなので、よく分からんが「ソーセージ玉ねぎサラダ 300円」を注文した。「絶対ストップて言ったらいかんよ」と言われて全然意味が分からなかったが、おかみさんがこれでもかとばかりにマヨネーズをブリブリブリブリブリブリブリとかけ始めたので、一瞬気がふれたかと思った。思わず「ちょ!ちょ!ストップて!!」と言いたくなる衝動を堪えて完成したのが以下の写真である。

 

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マヨネーズの他に、酢と一味を山盛りぶち込んだサラダの完成。魚肉ソーセージと身が大きなツナが敷き詰められていてインパクト大。これが予想に反してアッサリしているから不思議なものである。言わずもがな酒はどんどん進む。

氷が浮かないロックはプロの仕事

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二杯目は芋焼酎ロックを注文。何がマズいって、申し訳程度の氷がプカプカ浮いてるロックが一番マズいと思っている僕ですが、というかそんな店がゴマンとある風潮に憤りを隠せない僕ですが、見てくださいこの溢れるかち割り氷を。これが本当のプロの仕事。なみなみ入っててサービスをもいい。これが190円・・・

勘定が済んでることをあらわす「代入」の札

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おっさんと出身やこれまで住んだ土地のことについて一通り話すと今度は人生についての話になってきた。ちょっとヤバいと思ったけど、赤裸々なおっさんの話に深く頷く我々。お互いにいろんな失敗をしてきたけれど、楽しく飲む酒がそこにあった。一期一会。人間交差点。黄昏流星群。今宵のよき日に乾杯。

ふとおっさんのテーブルに目をやると「代入」と書いた札がある。これなんすか?と尋ねてみたところ「だいいれ」と読むらしく、金を既に払ってますよというサインとのこと。この札があると、入れた金が無くなるとおかみさんが教えてくれるという塩梅だ。ついつい飲み過ぎる人にとって良心的なシステム。今日は1,000円までと決めて飲めるのだ。

焼き鳥の缶詰ってこんなにうまいんだ

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サラダが空いたので、入った時から気になっていた焼き鳥の缶詰を注文。そのまま開けて食おうとしたらおっさんに止められた。「確か何か手を加えたはずだから待っちょれ」しばらくするとおかみさんが缶詰を開けレンチン。その後山盛りネギの皿で提供された。これが本当にうまくてビックリした。焼き鳥の缶詰を食べたことはあれど、レンチン&ネギは初めて。家でもやろうと思った。激しくおすすめです。

真の顧客ファーストを知った

いやね、みんなお客様視点お客様視点って馬鹿の一つ覚えみたいに言うけどさ、ここの利益を度外視した価格設定とおかみさんのサービス精神には敵わない。あのおかみさんの柔和な笑顔は、きっとその上品なスタンスから醸し出されるものだと思った。

常連さんもおかみさんをとても大事にしていた。席が満杯になったら常連さんはカウンターの中に入って働くという。そこに店と客の垣根はあまりない。みんなが楽しい時間を過ごそうという気持ちだけで回っている、そんな素敵な空間。激しくおすすめです。

おわりに

焼酎もう1杯飲んで勘定したらなんと二人で1,940円。ロック2杯行ってるし、結構酔った。巷で謳われるせんべろなんて千円で酔えた試しがないけれどここは本物だ。来てよかった。

余談だが、飲んでいると外から女性の声で「アーアーアーアー」と叫ぶ声が聞こえてきた。おっさんが「小倉名物シャブ中よ!」と教えてくれた。こうして小倉の通常運転の夜は更けていくのだった。

店舗情報

住所 福岡県北九州市小倉北区紺屋町6−14

時間 12:00~21:00

TEL 093-521-3268

定休日 日祝日