キジ猫世間噺大系

一人暮らしで猫を飼った男の末路

『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』への布石『時オカ』『ムジュラ』『風タク』を振り返る

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先日任天堂Switchのゼルダを買ったのだが、遅ればせながらそのクオリティの高さに圧倒されている。ただ、この最高傑作が生まれたのは布石となった過去の3D作品あってこそなのだ。以下に、過去作への超個人的な想いを吐露させていただくことにする。

ゲーム史に残る金字塔『時のオカリナ』

まず、3Dゼルダを語るには64の「時のオカリナ」を押さえておかなければならない。64での開発が2年も遅れたこの作品は、これまで2Dだった謎解き要素の次元が一段階上がったことによりそのクオリティは爆上げし、ゲーム史に残る金字塔を打ち立てた。ブレスオブザワイルドに繋がる青沼英二という男の仕事だった。

 

プレイしたのは確か中一の頃だった。もう20年前になる。朝学校へ行く準備をしていたら台風の影響で急遽休校となり、詰襟の制服姿のまま、これ幸いとばかりにカカリコ村奥のデスマウンテンに挑んだことを鮮明に覚えている。学校を休んで堂々とゲームができることが当時めちゃくちゃ嬉しかった。

ジャブジャブ様の中にバグで入る

他にも思い入れのあるエピソードとして、ジャブジャブ様のお腹の中に入る方法が全く分からなかったが、何かの拍子に頭辺りからバグですんなり入れたことがある。妹もその瞬間を見ていたのだがお互いに納得がいかず、正規の侵入方法を躍起になって探したものである。妹とは兄のゲームをよく見ているものだ。正解は「ジャブジャブ様にビンに詰めた魚を差し出す」だった。ネットもなかったあの頃、手探りで攻略法を探るのは楽しかった。

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本作はバグも多く、youtubeでバグを使って20分足らずでクリアする動画を目にした。各ボスが瞬殺される動画を見て、今更ながらこんな倒し方があったんだと新鮮な驚きを覚えた。

見た目は大人頭脳は子供

なお、本作は子供リンクが途中から大人に急成長する。見た目は大人、頭脳は子供というコナンの真逆の現象が発生するが、その重厚なストーリーに釘付けになった。7年の月日で荒廃してしまったハイラル城に中学生ながら無常を見た。

上質なストーリーもさることながら、立体構造を活用したダンジョンの仕掛は当時としては異質のクオリティだった。水の神殿の難易度はめちゃくちゃ高くて怖かった。もう二度と行きたくないと思ったその感じは田舎の親戚の集まりにも似ていた。さらに闇の神殿はトラウマで、リーデッドの側を息を止めて駆け抜けた。

世界が広がるフックショット

作中最もテンションが上がるアイテムといったらフックショットだろう。墓地で入手できるこのアイテムでリンクの行動範囲はとにかく広がる。ゼルダの生みの親 宮本茂は青沼英二に「フックショットなんてこんな楽しそうなもの、どうして早く使わせてあげないの」と言ったという。その甲斐なく、後半の大人リンクで手に入るこの武器は、世界が広がる予感に満ち満ちていた。

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敵を注視し続ける『Z注目』は3Dゲームにおける発明だったという。このZ注目でゲーム初心者でもなんなくアクションできるようになった。

挙げるとキリがないが、20年経っても色褪せない感動をありありと思い出すことができる紛れもない名作だ。

怖さをウリにした『ムジュラの仮面』

次に外せないのは「ムジュラの仮面」だ。いや、実際に序盤のデクナッツの仮面は外せないのだが、「あなたはまだ月のこわさを知らない」は厨二心を大いに刺激するサブタイトルだった。

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3日経つと月が落ちてくるこの世界は、前作の時オカからほんの一年余りで作られたというから驚きだ。時オカをベースに全く新しいコワさを押し出したパラレルストーリーは本当にゾクゾクした。チンクルを考えた人はどうかしてるぜと思ったし、若き開発スタッフ達が時オカのパッションそのままに勢いで作り上げた本作は、デスマーチの賜物だろうということは大人になって分かった。

余談だが、ムジュラの仮面はうちの猫によく似ている。

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64末期の本作はメモリー拡張パックを採用しており、Ⅱコンのマイクに通じる拡張性を感じた。これで実際にリンクのアクションの幅が広がっており、64がグレードアップしたような感慨を覚えた。なお、本作はサブストーリーが豊富にあり、単純な謎解きだけじゃなく個性溢れたお面を集めるというコレクター的楽しみもあった。

シリーズ最難と言われるだけあって初見殺しと言っていい難易度だが、ムジュラはただただ楽しかった。

どうしちゃったの?『風のタクト』

トゥーンレンダリングを採用した明らかな挑戦の跡が見える「風のタクト」は、ブレワイに繋がるオープンワールドコンセプトの走りである。大学生の頃夏休みに実家に帰った時に、妹が持ってたゲームキューブでやった記憶がある。舞台が海になり、猫目リンクという攻めた表現は当時物議を醸した。

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どう見てもチタンやん

というのも、リンクの見た目がほとんど「かってに改造」の坪内チタンなのである。

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このリンク、隠されたポイントを通過すると、そのポイントを目で追うというギミックがある。プレイヤーはリンクの視線の先を探索し、宝箱なりを手に入れるのだが、個人的にはこれまでにない画期的なアイデアだと思った。

「アンタ」呼ばわりするゼルダ

また、本作は海洋が舞台であり、期待に胸を膨らませて船で大海原に漕ぎだすのだが、いかんせんだだっ広い海には何もなく、当時のハードとアイデアの限界を感じざるを得なかった。さらに残念なことに本作のストーリーはほとんど覚えておらず、リンクを「アンタ」呼ばわりするゼルダ姫だけが微妙なインパクトを残すのみだった。

時オカ、ムジュラに比べるとそのクオリティはお世辞にも高いとは言い難く、僕のゼルダ離れを加速させる結果となってしまった。よって、僕はトワプリもスカウォもやっていない。いい歳してゲームなんて、と思った時期でもあった。

ただ、この失敗があってこそ最新作でハイクオリティのオープンワールドが作れたのもまた事実だろう。

終わりに

こうして振り返ってみるとゼルダは常に新しいことに挑戦していると改めて感じた。「任天堂の決算は天国か地獄しかない」は任天堂の中興の祖、山内社長の言だが、中長期的に安定した収益を上げる商材ではない以上、とにかく挑戦し続けなければならないのが宿命なんだと思うし、その産みの苦しみは想像に難くない。

次回は、宿命付けられた挑戦の結実として現れたブレスオブザワイルドをレビューしようと思います。